2011/09/30

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫についての一般的な知識

1)悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(いわゆる“がん”)です。リンパ系組織とは、ヒトの免疫システムを構成するもので、リンパ節、胸腺(きょうせん)、脾臓(ひぞう)、扁桃腺(へんとうせん)等の組織・臓器と、リンパ節をつなぐリンパ管、そしてその中を流れるリンパ液からなります。リンパ系組織を構成する主な細胞は、リンパ球と呼ばれる白血球です。リンパ液の中には液体成分とリンパ球が流れていて、やがて血液と合流します。リンパ系組織は全身に分布しているため、悪性リンパ腫、特に非ホジキンリンパ腫は全身で発生する可能性があります。

2)悪性リンパ腫の種類

悪性リンパ腫という病名は、さまざまなリンパ系組織のがんを大きくまとめて呼ぶ名前で、その中に含まれる個々の疾患の臨床経過や治療反応性、あるいは予後は大きく異なります。ですから、自分にとって最適な治療を選択するためには、「悪性リンパ腫の中のどのような病型(タイプ)ですか?」と、まずは医師に質問することが重要です。

(1)病理組織学的分類

悪性リンパ腫には、大きく分けてホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つがあります。ホジキンリンパ腫は日本では少なく、約10%です。非ホジキンリンパ腫はリンパ腫の顔つき、すなわち顕微鏡でわかる形態学的特徴(病理学的分類といいます)、細胞系質的特徴(“B細胞性、T細胞性、NK細胞性”)、そして染色体・遺伝子情報などをもとに分類されます。それが腫瘍細胞の悪性度とその後の臨床経過、予後を推定し、治療法を選択するために大変重要になります。
図1 悪性リンパ腫の種類:
がん細胞の起源により非ホジキンリンパ腫は複数に分類されます。

(2)進行のスピードによる分類

非ホジキンリンパ腫は、発症してからの病気の進行速度によって分けることができます。進行のスピードによる分類は、「診断された病気を、治療しないで放置した場合に推測される予後」と言い換えることもできます。一方、上記の「病理学的分類」は、それぞれのがんの顔の特徴をつかまえているといえるでしょう。それぞれの患者さんに適した治療法を決めるうえで、両者を組み合わせることが重要であると考えられています。進行のスピードが速いタイプを高悪性度、ゆっくりなものを低悪性度と分類しますが、強力な化学療法や造血幹細胞移植などの進歩した現在においては、高悪性度とされるリンパ芽球性リンパ腫やバーキットリンパ腫も根治が期待できます。
表1 臨床経過からみた非ホジキンリンパ腫の分類
進行スピードによる分類該当する非ホジキンリンパ腫の種類
低悪性度(年単位で進行)濾胞(ろほう)性リンパ腫
MALTリンパ腫など
中悪性度(月単位で進行)びまん性大細胞性B細胞性リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫など
高悪性度(週単位で進行)リンパ芽球性リンパ腫
バーキットリンパ腫など

3)悪性リンパ腫の症状

首、腋(わき)の下、足のつけ根などのリンパ節の多い部位に、痛みを伴わないしこりが触れるなどの症状がよくみられます。全身的な症状として、発熱、体重の減少、盗汗(顕著な寝汗)を伴うことがあり、これらの3つの症状を「B症状」といい、特に重要視されています。体のかゆみを伴うこともあります。その他、皮膚の発疹(ほっしん)、しこり、いろいろな場所の痛みで気づくこともあります。

4)悪性リンパ腫の診断

悪性リンパ腫の診断に用いられる検査には、以下のようなものがあります。

(1)リンパ節生検

大きくなっているリンパ節のすべて、あるいは一部を、いろいろな検査に用いるために局所麻酔を行って採取します。採取された組織は、病理医が顕微鏡で腫瘍の顔つきを調べて、病理学的分類を行うのに用いられます。また組織の一部は、診断に重要な染色体検査や遺伝子検査にも使われることがあります。遺伝子検査といっても、親から子へ遺伝する病気の有無について調べるものではなく、がん細胞が持っている特有の遺伝子の異常を調べるものです。診断ばかりでなく、治療の手がかりとしても非常に重要です。これらの検査によって、リンパ腫の病型(タイプ)が決定されます。

(2)病気の広がりをみる検査

悪性リンパ腫に対する最適な治療を選択するために、病気が体のどこに、どれくらい広がっているかを知ることが大変重要です。病気の状態が進んでいるかどうかは、予後に大きく影響します。このため、以下のような検査が重要になります。
  • 胸部X線検査
  • コンピュータ断層撮影(CT)
  • 核磁気共鳴検査(MRI)
  • ガリウム(Ga)シンチグラフィー
  • ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)
  • 骨髄検査:穿刺(せんし)吸引検査、生検
  • 腰椎穿刺(ようついせんし):脊柱管(せきちゅうかん)の中にある液体(脳脊髄液)を採取する検査(中枢神経浸潤(しんじゅん)が疑われるとき、あるいは中枢神経への広がりが起きやすいタイプの病気のときに行われることがあります。)
  • 消化管検査:胃内視鏡、大腸内視鏡等

(3)全身状態と、原因となるウイルスをみる検査

悪性リンパ腫の中には、ウイルス感染を契機に発生するものがあります。このため、さまざまなウイルスの感染状況を調べることも重要になります。
  • 末梢血、肝機能、腎機能、血糖
  • ウイルス抗体価:B型肝炎、C型肝炎、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-I)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、Epstein-Barrウイルス(EBV)

(4)病気の広がりや勢い、治療効果を反映する検査

以下の血液検査をチェックすることが重要です。
  • 乳酸脱水素酵素(LDH)
  • C反応性蛋白(CRP)
  • 可溶性インターロイキン‐2(IL-2)受容体


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独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターより転載
更新日:2011年02月21日    掲載日:2006年10月19日